今をときめく女性プレイヤーのみで構成された、hyper electra(ハイパーエレクトラ)。
大会ブースでたくさんのユーザーが駆けつけているのを、目にした人も多いのではないだろうか。
ファンの心を掴んでやまないhyper electraの真相に迫るべく、
選手のまとめ役である星野理絵プロと、アドバイザーのKTM.氏にインタビューを行った。
選手・デザイナー紹介
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- 星野理絵ほしのりえ
- JAPAN LADIESでの優勝経験を持つ実力者。
その豊富なダーツキャリアからhyper electraのまとめ役を担う。
ブログ「ほしのりえともうします。」は人気コンテンツである。
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- hyper electraアドバイザー
- KTM.
- ダーツ界のご意見番として活躍中。hyper electraにおける、
バレルをはじめとしたプロダクトデザイン、マネジメントを行う。
School of DartsやDeepitでは、多数の有名選手を輩出した。
hyper electraってなに?
- KTM.
- バレルブランドというよりは、野球の球団みたいな感じ。チームがあって、そこに選手を入れます。その中にはコーチがいます、そしてそのコーチがスポンサーを探しますみたいな。そのコーチ役として俺がいる形。
選手の管理やケアに関しては、星野が担当してる。バレルのデザインなどに関しては、選手と俺が直接やり取りするけど、それ以外のことは星野が全部まとめ役として機能している。色んなメーカーがあるなかで、こういうパターンは珍しいと思う。
当初は星野と一緒にやるって思ってなかった。ただ、星野のやりたいことは、ハイパーエレクトラならできるよってことで入ったんだよね。女性プレイヤーで星野ほど経験があって、色んなことを知ってて、お姉さん役として適任な人はいなかった。だから、選手が主導して全部決めていっているというのが、ハイパーエレクトラの特徴かな。
- 星野
- そうですね。ハイパーエレクトラというメーカーの構造として、社長、アドバイザーのKTM.さん、そして私がいて、選手がいます。それぞれのポジション間での、やり取りが非常に活発ですね。
- KTM.
- ちょっと目を話すと、めちゃくちゃLINEの通知が溜まってるもんな(笑) やっぱり、商品出す時期はすごいよね。
- 星野
- ハイパーエレクトラはまだ2年目で、1年目は探り探りという状態でした。ただ、そんな中でもユーザーさんからのご意見を、選手それぞれがキャッチしているんですよね。なので、それを活かしつつ、自分たちのエッセンスも加えて、「こういうの作れませんか?」とか「ユーザーさんはこういうの欲しています」とかをメーカーに伝えています。やっぱり、選手がユーザーさんの一番近いところにいますからね。
最初はみんな遠慮していた部分もありましたが、2年目になって「とりあえず思ったことは全部言ってみよう」という空気になってきたので、良い流れですね。メーカーからも「これはできるけど、これはできないよ」などとリアクションが返ってくるので、提案するのも楽しみながらやってます。
それとひとつ気をつけているのが、「私が一番に発言をしない」ということです。まとめ役の私が最初に発言してしまうと、他の選手が迎合してしまう可能性があるためです。私以外の選手からの発言を、できる限り大事にしています。みんなが困ってて煮詰まっている状態では、サポートに入ることもありますけどね。逆に私が間違ったことをしていた場合には、遠慮なく指摘してくれるので、メンバー間の信頼関係はすごくあると思います。
- KTM.
- そうね。ハイパーエレクトラの良いところは、そのあたりだよね。
- 星野
- もちろん、選手によっては自分の意見を言ったり、表現したりするのが苦手な方もいますが、引き出してあげるのもまた私の役割ですね。
- KTM.
- たまに俺にも噛み付いてくるもんね。でも、それが大事なのよ。結局売るのは選手なわけだから、選手が発言してくれないと修正もできない。そういう意味では、良い部分をもったプレイヤーたちが集まったね。
- 星野
- なので、自分たちが納得して「これは良いよね!」ってものの方が、より進めやすいです。KTM.さんがデザインしたものに対して、「それはちょっと......」というのも、結構バシバシ言っちゃってますね(汗)
- KTM.
- 衝突はありますよ。選手から「これ厳しいですよ」と言われても、敢えてやっている場合がある。ハイパーエレクトラはまだ全国区の知名度じゃないから、注目を集めるために、奇抜なものを織り交ぜたりする。だけど、そういうものに対して、選手はかなり拒否反応を示す。で、俺はショックを受ける(笑)
現代に生きるプレイヤーたちのSNS活用術
- 星野
- ハイパーエレクトラのグループLINEでは、商品のことだけでなく、プロダーツプレイヤーとしての悩みや、他愛もない話も飛び交っています。さらに、みんな関東に住んでいるので、「じゃあ会って、ご飯食べながら話そうか」となるのも良いところだと思います。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をしっかりするように、というのは口酸っぱく言っています。
- KTM.
- みんなタイミングきちんと取り合ってるよな。SNSとかも「最初に誰がアップするから、その何時間後に誰ね」みたいな。
- 星野
- それも私が今までプレイヤーとしてSNSを活用してきた経験の中で、リーチが最大化できる時間帯・タイミングに気づいたんですね。それをメンバーたちにもレクチャーしながらやってます。みんなが一斉に記事を拡散するのではなく、それぞれの事情も考慮しながらです。最初のうちは、そのタイミングを連絡をとりながらやっていましたが、今では何も言わなくてもバランスよくできていると思います。「言われたことだけをやる」というのではなく、自主性を持ちながらやっています。もし「それは違うぞ」ということがあれば、KTM.さんから言って頂くこともありますけどね。
- KTM.
- でも、俺から言うことは、ほとんどないよね。「それ、星野の仕事だろ」って(笑)
- 星野
- ヒーッ!(笑)
- KTM.
- ハイパーのメンバーは、よく会って食事してるもんなー。この間も「すっごく良い案が思い浮かんだから、今から来て」っていきなり連絡来たもんね。その時はカレー作ってたから、ご遠慮させてもらったけど(笑)
選手ひとりひとりがメーカーの営業マン
- KTM.
- あとひとつ気をつけているのが、プレイヤーたちに具体的な数字を伝えないことです。例えば「これを作るにはいくらです」「最低ロットはいくつです」とかを先に聞いてしまうと、そこから考えてしまうので、発想が膨らまなくなってしまう。
- 星野
- 最終的な判断はKTM.さんにして頂くんですが、自分たちで解決できる部分に関しては、なるべく自力で頑張る。こういった部分は、ハイパーエレクトラの独特なやり方だと思いますね。レディースプレイヤーしかいないから、というのもあるかもしれません。
- KTM.
- 「自分たちがメーカー」っていう気持ちになってやっていることが、良い方向に向かっているんだろうね。だから、ハイパーエレクトラに関しては、俺が今後どういう風にしようとか、そういうのはあまり考えていない。彼女たちが「これやりたい!」っていうことに関して、多少のアドバイスをしてあげるくらいで。
- 星野
- 自分のモデルを作ってもらえることは当然嬉しいんですが、一方で「売れなかったらどうしよう」という不安も、この形でやっている以上あります。ただ、そういったフォローをメーカーがしてくれるので、気持ちの部分ではすごく助かっています。おかげさまで今ではユーザーさんが自分たちのバレルを手にとってくださっているので、それぞれの選手も自信がついてきていると思います。
- 星野
- ただし、自分のモデルだけをプッシュするのではなく、あくまでユーザーさんにあったものを提案するようにしています。ハイパーエレクトラのバレルは全てタイプが異なるので、他のプレイヤーモデルなら合う可能性もありますからね。基本的に選手は全てのモデルを持ち歩いているので、いつでもお声がけ頂ければ試投が可能ですよ。
ユーザーに感謝の気持ちを届けたい
デザイナーズコメント
選手を成長させたいんですよね。「ベスト8でいいや」とかじゃなくて、優勝してもらうためにバレルを作っています。優勝するためのスキルをつけてもらうので、そのプレイヤーにとってはじめのうちはとても投げづらいものである場合もあります。しかし、その投げづらさを克服することで、自然とウィークポイントが消えてる。
僕は今までトッププレイヤーのモデルしか作ってきたことがありません。彼らは技術的にもう醸成されているので、バレルに求められるのは「いかにミスショットをなくすか」ということです。一方でハイパーエレクトラに関しては、そのプレイヤーが1年後か2年後か、それとももっと先になるのかわかりませんが、「優勝するために必要な成長」という意味合いで作っています。今までとは全く異なったアプローチの仕方でやらせてもらっているので、すごく面白いです。たまにイラッとするときもありますけどね。言う事聞かない幼稚園児たちの先生やってる気分です(笑)
話は戻りますが、トッププレイヤーのバレルを作るのとは違った難しさがありますよ。そして、すごく時間がかかる。例えば、ひとつのバレルを作るのに、ベースとなるデザインをどんどん派生させていって、最終的に図面を30〜40くらい引きます。ただし、実際にプロトタイプを削って作っているわけではありません。僕らデザイナーは、選手から一発OKがもらえないといけないと思います。プロトタイプを作るのにも時間とお金がかかるわけで、クライアントであるメーカーの負担になりますからね。一発OKを出してもらうためには、バレルを削るまでに、どれだけ図面上での選択肢を増やしておくか、が肝だと考えています。
a'll星野理絵モデル
「買ってくれた人のために使いやすいバレルを」ということだったので、一般ユーザーの使いやすさも重要視してワイドレンジに作りました。
chemical牧野百花モデル
牧野選手は、バレルではなくシャフトを持ってしまう癖があったので、きちんと持てるように設計しました。
crazy crew青木まゆモデル
青木選手はハードダーツもやるので、ハードとソフトのハイブリッドというイメージで作りました。彼女の投げ方や矢角に合わせています。
kowka榎戸夏海モデル
グリップの位置を迷いやすい選手なので、「ここを持つ」というのが明確に分かるように作りました。
J'sJoy Hsiehモデル
僕が使っていたプロトモデルをすごく気に入ってくれたので、Joy選手用にカットを少し変更しました。
activate
デザイン自体は特別難しいことはしていないのですが、その中で「どれだけ今っぽく見せられるか」に挑戦したモデルです。